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ブラック・マンデー
Black Monday   No.5
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 田辺課長がちょっと考えてから、また話を続けた。

 「例えばですね。
 ワン・イヤー(1Year、1年)のデポを『取ります』よね。

 半年後に、思惑(おもわく)通りに金利が上昇しました。1年の金利が8パーセントになったとしましょう。

 しかし、その間に時間は半年、経っているわけですから、最初に『取った』7パーセントの資金の残存期間は「六ヶ月」になっていることになります。

 そうすると、このワン・イヤー(1Year、1年)で『取った』資金は、ワン・イヤー(1Year、1年)では『出せない』訳です。

 実際にはシックス・マンス・デポ(6Months Deposit)を『出す』ことになります。

 当然イールド・カーブ(金利曲線)がありますから、シックス・マンス(6Months、六ヶ月)金利はワン・イヤー(1Year、1年)よりも低いことになります。

 ワン・イヤー(1Year、1年)が8パーセントになっても、シックス・マンス(6Months、六ヶ月)はセブン・アンド・ハーフ(7.5パーセント)からセブン・アンド・スリー・クォーターズ(7.75パーセント)程度でしょう。

 だから、思惑が当たって、ワン・イヤー(1Year、1年)が1パーセント上昇しても1パーセントの利鞘をフルに享受できる訳ではありません。

 なおかつ、日々の『実現損』は毎日出ている訳ですから、半年後にシックス・マンス(6Months、六ヶ月)を7.5パーセントで出しても『実現損』の方が大きいことになってしまいます。

 手前の半年間、毎日1パーセントずつやられていることになりますから、残りの半年で0.5パーセントの利益が出ても、トータルで見れば損の方が大きいといったこともあるわけです。

 まあ、実際のオーバー・ナイト金利は、短期金利市場で毎日上下動を繰り返します。

 そうやって、オーバー・ナイト金利が上がったり下がったりしながら全体の金利が上昇していったり、下降していったりするので、これは実際にやってみなければ断定は出来ませんが・・・・・。」



 『なるほど・・・・・』
 俺は黙って聞いていた。



 田辺課長の詳しい説明が続く。

 「金利が上昇する場合には、市場参加者がいっせいに長めの資金を『取ります』。
 まあ当然のことですよね。
 『金利が高くなるのならば、早めに資金調達しておこうか』、『金利が安いうちに、お金を借りておこうか』、そう考えるのが普通ですから。

 そうすると、ごく短期的な現象なのですが、需給から、手前の資金がみんな余剰になるんです。

 資金を『取る』ということは資金が手元にある状態になる訳ですから、これが余剰資金として、いっせいにオーバー・ナイト『出して』くることになります。

 そうすると、1年とか、それ以上のターム(Term, 期間)の金利は上がっているのに、オーバー・ナイト(Over Night)やワン・マンス(1Month)といった手前の金利が下がる現象が起こることがあります。」



 『ふーん・・・・・。
 そうなんだ・・・・・。
 そんなこともあるんだ・・・・・。』



 「そうなると『取った』場合に、手前で出る『実現損』はもう少し拡大します。

 だから、『取る』戦略はタイミングが重要なのです。

 金利上昇という相場を当てても、利益に結びつかないことがあるのです。

 よく言うんですよ、素人のディーラーが、『相場観が当たっているのに、どうして負けちゃうんだろう』ってね。

 それは、タイミングが間違っているんです。

 金利の場合、大きな相場観を外すことはあまりありません。

 日々に起こる、短期金利の目先の上下動は別ですがね。

 金利が上昇傾向にあるのか、下落傾向にあるのかは割とはっきりしていますし、きわめてロジカルな面がありますから。

 その点、ロジックのない為替とは異なります。」




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