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独断と偏見の為替相場

日経BP書店 書籍紹介-ドル円ユーロ投資入門
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【通貨の切り上げ・切り下げ】 2002/10/26(土)
―――および、アジア通貨危機―――

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-----Original Message-----
From: *******
Sent: Thursday, October 24, 2002
To: smatt@d4.dion.ne.jp
Subject: 質問があってメールしました。


初めまして。いつもメール楽しみにしています。僕は平凡な大学生です。
為替レート関係のことでわからないことがありメールしました。
ある本に、固定相場制時代のことについて書いてあったんですが、
当時はよくマルクが切り上げられたり、ポンドが切り下げられたりしたと
ありました。
「マルクの切り上げが予想されると、ドイツに大量に資本が流入し、
マルクは切り下げられることがなく、切り上げがなかったとしても、
ドイツに流入したマルク買いの資本は損はしない。
しかし、切り上げが行われたら短期間に膨大な為替差益をえることができ、
大量の資本がドイツに流入し中央銀行はマルク・ドルレートを維持するために、
ドルを買わざるを得なかった。」とありました。
切り下げとは、円で考えれば、1ドル100円から80円になることですよね。
為替差益は80円で買って100円で売れば発生します。
つまり買った額より円安、通貨が切り下げられた時に得られることになります。
この文章では、ドルを売った時に為替差益を得ています。
ということは、ここでいう資本とはドルのことでいいんですか?
ついでに聞いちゃいますが、ペッグ制とは、何でしょうか?
数年前のアジア通貨危機はこれと同じような現象だったのですか?
長くなってすいません。
--
*******


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-----Original Message-----
From: 物語
Sent: Saturday, October 26, 2002
To: *******
Subject: RE: 質問があってメールしました。


******* さま

メール、ご質問ありがとうございます。

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まず、以下の記述ですが、

> 切り下げとは、円で考えれば、1ドル100円から80円になることですよね。

これは、逆です。

【円の切り下げ】は、【円の価値を下落させること】ですから、
【円安】にするということです。
『ドル/円』で考えれば、【ドル高円安】にすることですから、
1ドル100円を基準にするのならば、1ドル100円から120円になることです。

【円の切り上げ】は、【円の価値を上昇させること】ですから、
【円高】にするということです。
『ドル/円』で考えれば、【ドル安円高】にすることですから、
1ドル100円を基準にするのならば、1ドル100円から80円になることです。

♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯

> 「マルクの切り上げが予想されると、ドイツに大量に資本が流入し、
> マルクは切り下げられることがなく、切り上げがなかったとしても、
> ドイツに流入したマルク買いの資本は損はしない。
> しかし、切り上げが行われたら短期間に膨大な為替差益をえることができ、
> 大量の資本がドイツに流入し中央銀行はマルク・ドルレートを
> 維持するために、ドルを買わざるを得なかった。」

これは、このままの文章で正しい記述です。
もう少し詳しい説明を加えましょう。

外国為替取引を考える際には、原則として、対価は「ドル」と考えてください。
ですから、上記の文章で【ドイツに大量に資本が流入し】ということは、
【マルクが買われて、ドルが売られる】ということです。

別な言い方をすると、【ドルのままでは、ドイツ国内で使えませんから、
ドイツに資本投入するためには、マルクという通貨に変換しなければ
なりません】。
だから、【ドル売りマルク買い】が行われるのです。

大量の【ドル売りマルク買い】が起これば、当然、価格(価値)が動きます。
ドルが下落して、マルクが上昇するのです。
すなわち、【ドル安マルク高】になります。

それで、
> マルクは切り下げられることがなく、切り上げがなかったとしても、
> ドイツに流入したマルク買いの資本は損はしない。
と記述しているのです。

ドイツに資本投入する目的で、【ドル売りマルク買い】を行った投資家は、
【ドル安マルク高】になれば、為替差益を享受することになります。

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> しかし、切り上げが行われたら短期間に膨大な為替差益をえることができ、
> 大量の資本がドイツに流入し

実際に【マルクの切り上げ】が行われるということは、
これは、【切り上げの時点で】、強制的に【ドル安マルク高】にする
ということです。
だから、短期間に膨大な為替差益をえることができると記述しています。

こういったことに気がついた市場参加者は、我も我もと、同じ行動を
とります。
世界中の多くの市場参加者がいっせいに、大量の【ドル売りマルク買い】
を行うわけです。

ですから、
> 大量の資本がドイツに流入し中央銀行はマルク・ドルレートを
> 維持するために、ドルを買わざるを得なかった。

中央銀行(=ドイツの中央銀行=ブンデスバンク)が、
【ドル買いマルク売り】を行ったのですから、これは【市場介入】を
行ったわけです。

実際に【マルクの切り上げ】が行われたのですから、既に、
【ドル安マルク高】になっているのですが、世界中の多くの市場参加者が
行った、大量の【ドル売りマルク買い】によって、いっそうの
【ドル安マルク高】になってしまうのを防ぐために、【介入】によって、
【ドル・マルク】レートを維持せざるを得なかった、ということです。

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♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭

ペッグ制は、ある通貨の価値(価格)を、別の通貨にリンクさせることです。

ペッグ=peg:釘付け という意味です。

リンクさせる通貨が、不安定な通貨であっては意味をなさないですから、
通常は、ドルにリンクさせることになります。

つまり、ある通貨でドルにペッグするといった場合、
ドルの価値(価格)が上昇すれば、そのペッグされた通貨の価値(価格)も
上昇します。
ドルの価値(価格)が下落すれば、そのペッグされた通貨の価値(価格)も
下落します。

♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭

通貨価値は、その国の政治・経済・軍事などなど、ありとあらゆる事柄、
ファンダメンタルズに基づいて決まるものです。

何らの根拠もなく、別の通貨にペッグすることに、土台無理があり、
一般には維持することは難しいでしょう。

♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭

アジア通貨危機の場合は、
事実上【ドル・ペッグ制】を採っていた【タイ・バーツ】が、上述の理由で、
ペッグできなくなった。
市場の圧力で、事実上【タイ・バーツ】が切り下げられる状態となった。

そうなると、上述の、【ドイツ・マルク】と逆の状況となった。

つまり、市場参加者の大量の【タイ・バーツ売り(ドル買い)】が起こった。
中央銀行による【ドル売りタイ・バーツ買い】も効果がなく、結果として、
市場の圧力に屈した。
【タイ・バーツ】の売りは、売りを呼び、【タイ・バーツ】の暴落と
なったわけだ。

このことが、アジア通貨全般に対しての不安に飛び火し、
アジア通貨危機を起こした。

♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭♭

上述のコメントで、一般論としては良いのだろうが、個人的には、もう少し
思うところがある。

そもそも、【ペッグ制】そのものに何らの根拠もなく、そういう制度を
採っていたことに矛盾がある。
別な言い方をすれば、起こるべくして起こったことであるということ。
アジア通貨危機は、当時に起こらなくとも、遅かれ早かれ、必ず、
起こったであろうということ。

ペッグ制は、市場規模が小さい、市場参加者が少ない場合は、維持が可能だが、
市場規模が拡大した場合は、通貨価値は、適正価格(適正な価値)に
行かざるを得ないということだ。

それから、アジア通貨危機が起こる直前まで、米国ヘッジファンドなどの
巨大な資金が、アジア各国に投入されており、
そういった資本が流入している間は、アジア各国は空前の好景気に沸いていた。

米国ヘッジファンドのみならず、日本からも資本投入されていた。
みなが強気になっている間は、『赤信号、みんなで渡れば、恐くない』
といった雰囲気だったのである。

アジア通貨に資本投入が続いている間は、株価の上昇なども相乗効果となり、
沸きに沸いていたといえる。
ある種のバブル状態であったといえよう。

通常の市場規模を超える資本流入が起こっているにもかかわらず、
それに対応する市場整備を怠ったのだから、起こるべくして起こった出来事
に過ぎないと考えている。

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 松田 哲
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 メール: mailto:smatt@d4.dion.ne.jp
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