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フォレックス・ディーラー物語
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青春のモニュメント No.10

 「また急に落ちたよぉ・・・・・。
 181.45 - 55から、
181.10 - 20になっちゃった。

 うちが買うのをやめると、様子見て売ってくるみたいだね・・・・・。」


 「・・・・・。」

ロイター・モニター

 大竹さんのポジションは、


 [(181.10−181.14)× 1,000,000,000 = −40,000,000 ]


 4000万円のマイナスになった。


 俺のポジションは、


 [(181.10−181.285)× 96,000,000 = −17,760,000 ]


 1776万円のマイナスだ。

 大竹さんに500本渡すときに、 0.5 銭もらっているから250万円の儲けはあるけれど、


 [(181.29−181.285)× 500,000,000 = +2,500,000 ]


 それをいれても1500万円以上の損失だ。


 俺は大竹さんと電話をつないだまま、声には出さないが、いろいろな思いが錯綜していた。

 『さっき、181.45 - 55の時に、俺の96本は売っておけばよかったのだろうか・・・・・。
 ちょっと悔いが残る・・・・・。
 そうすれば、少なくとも俺のポジションだけは負けることはなかっただろう・・・・・。

 しかし、大竹さんが、これだけ買っているのに、俺だけ売り逃げるわけにもいかないし・・・・・。

 それに、およそ1100本、11億ドルも買ったんだから、そんなに落ちることもないだろう・・・・・。

 こんなに買ったんだからドル・ロングにもしておきたい気もするし・・・・・。』


 大竹さんが沈黙を破って、言った。

 「梅田! あと500買え!」

 一瞬、俺はぼんやりしてしまった。

 「・・・・・? ・・・・・?」

 「梅田、あと500買おうよ・・・・・。」

 「買っていいんだね? あと500本、買っていいんだね?」

 俺は念のために確認した。

 ドル1000本、10億ドルは大竹さんの権限でも最大限なはずだ。
 いや、すでに、10億ドルは権限をオーバーしているかもしれない。

 さらに、あと5億ドル買ったら総計で15億ドルになる。
 そんなに大きな権限が大竹さんにあるはずはない。

 東京本店の年金運用部の外貨資産の総額が20億ドル程度なのだから、いくらなんでも15億ドルは大きすぎる。

 もう東京は夜中の1時に近い。
 この時間では、大竹さんも上司の河村次長に連絡を取りにくいだろう・・・・・。

 大竹さんの声は暗かった。

 「買っていいよ・・・・・。 あと500本、買ってみよう。」

 「わかった・・・・・。 あと500買うよ・・・・・。」

 俺はちょっと気が重かった。


 俺は電話を切って、日本語で田辺課長に言った。

 「年金、大竹さん。 あと500本買います。」

 田辺課長もちょっと変だと感じているのだろう。
 いつもことある度に俺をからかうのに、真顔のままだ。

 「大竹は大丈夫なのか?」

 「・・・・・。」

 俺は返事に困った。

 返事をしないでいると、田辺課長が

 「じゃあ買おう!」

 そう言い切って、田辺課長が、英語でディーリング・ルームの全員に、さらにドルを500本買う旨を告げた。

 「ダラーイェン、テン、プリーズ!」
 (Dollar Yen, Ten please!)

 「ダラーイェン、テン、プリーズ!」
 (Dollar Yen, Ten please!)

 「ダラーイェン、テン、プリーズ!」
 (Dollar Yen, Ten please!)

 「ダラーイェン、テン、プリーズ!」
 (Dollar Yen, Ten please!)

 「ダラーイェン、テン、プリーズ!」
 (Dollar Yen, Ten please!)

 また、マーケットは蜂の巣を突っついたように騒然となった。

 そりゃそうだろう。
 マルワ・トラスト・ニューヨークも、さすがにもう買い終わっただろうと、ディーラーブローカーも、みんな思っていたところだ。

 やっている俺だって、もう終わりだろう、と思っていたくらいだ。

 俺たちの「ダラーイェン、テン、プリーズ!」の声を、ブローカー達が聞いたら、『また、でたー・・・・・』と思うに違いない。


 今度はなかなかプライスがでない。

 俺たちがプライスを聞く前の気配値は181.10 - 20だったのに、最初に取れたプライスは181.40 - 50だった。


 「フォーティ - フィフティ!」
 (40 - 50!)

 「マーイン!」
 (Mine!)


 「フォーティ - フィフティ!」
 (40 - 50!)

 「マーイン!」
 (Mine!)


 「フォーティ - フィフティ!」
 (40 - 50!)

 「マーイン!」
 (Mine!)




ロイター・モニター

 「 フィフティ - シックスティ!」
 (50 - 60!)

 「マーイン!」
 (Mine!)

Line



 181.50を上に抜けると速かった。


 182.00は少し売りの抵抗があったが、182円台になると、オファーがなくなり、値が飛びはじめた。
ロイター・モニター

 俺達は上値を追いかけるように買い上がった。

 183円台も200本くらい買った。




 最高値は183.35が付いた。


ロイター・モニター




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