エイドリアンを見ると、必死の形相で、取引をした相手銀行・取引レートそしてその金額をチェックしている。
俺がエイドリアンの方を見ていることに気が付くと、エイドリアンはすぐに、
「アバウト・スリー・シックスティ!」
(About 360!)
と、答えた。
約360本、ドルを買ったと言っているのだ。
大体、自分の計算と合っている。
「ふー・・・・・。 よし、だいじょうぶだ・・・・・。」
ため息と独り言がでる。
振り返って、時間を見た。
ニューヨークは4時を回っている。
東京は朝の5時を回ったところだ。
シドニーが朝の6時だ。
マーケットはだいぶ薄くなって、気配値もぼやけてきている。
183.00 - 183.30のゾーンにいることだけは、はっきりしている。
183.00の買い(Bid)は、ラッサー・マーシャルとタレットに10本ずつ入れてある。これが売られない限り、183.00よりも上にドル・円の気配値はあるはずなのだ。
エイドリアンにこの360本のアベレージを計算するように頼んだ。
182.63くらいだと、すぐに返事が来た。
彼女は大学の数学科を卒業しているだけあって計算は速い。
もちろんこんな簡単な計算をわざわざ大学で習っていた訳ではないだろうが・・・・・。
大竹さんのポジションを計算した。181.5767で15億ドルと、今回買ったのが、182.63で3億6000万ドルだから、
[(181.5767×1,500,000,000 + 182.63×360,000,000)
÷(1,500,000,000+360,000,000)=
181.78056 ]
181.78で18億6000万ドルのロングということになる。
現在のビッド183.00で、大竹さんの評価損益も計算すると、
[(183.00−181.78)× 1,860,000,000 = +2,269,200,000 ]
22億6920万円のプロフィット(利益)ということになる。
すごい金額の勝ちだけれど、183.00で18億6000万ドル売れたならば、という条件が付く。
183.00でそんな巨大な金額を売れるはずがない。
18億ドル以上の巨大なポジションで22億円以上の評価益と言ったって、この危ない状況では、所詮、「絵に描いた餅」だ。
ドルを売らなければ、利益は確定しないし、何かドル売りのニュースでも出たら、とんでもない金額の損になってしまう。
大竹さんのポジションだから、俺の責任で持っているポジションじゃぁないから、俺は平静を保っているだけだ。
とても、こんなばかげたこと、するもんじゃぁない。
ただ、ほっといたら、大竹さんが首になっちゃう・・・・・。
俺のできるかぎりのことはやった・・・・・。
もう、動かないで欲しい・・・・・。
このまま、ニューヨークの5時が来て欲しい。
|
|
|