損益が確定し、自分のポジションが軽くなって、田辺課長に報告しておかなければと気が付いた。
「田辺さん。
自分のポジションと、オーバーしていた50本、合計で96本ですけど・・・・・。」
「うん。 どうした、あれ?」
「はい。 最終的には全部、大竹さんのドル買いに当てました。
今現在、ポジションは、オール・インでスクエアー(Square)です。」
「そっかぁ。 ご苦労さん。」
「損益が5000万円くらいのプラスです。」
「そっかぁ・・・・・。 よかったじゃないかぁ。 よくがんばったなぁ。」
「年金にもう少し高いレートを付けてもいいんですけどぉ・・・・・。」
「やめとけ、やめとけ。
大竹だって、苦しいんだろ?
あいつから取ったてしょうがないよぉ。
くれてやれよ。」
「はい。」
田辺課長にそう言われて、気が休まった。
もう、ニューヨークの5時が近かった。
東京ももうすぐ朝の6時だ。
大竹さんに電話をしなくちゃ、と思っていたら、突然ボイス・ボックスからスーザンの大きな声が聞こえた。
「サーティ・ビッド! ノー・オファー!」
(30 Bid! No Offer!)
「フォーティ・ビッド! フォーティ・ビッド!」
(40 Bid! 40 Bid!)
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「フィフティ・ぺーイド!」
(50 Paid!)
183.50が出合った。
急に買い気配になった。
俺は、タレットのダイレクト・ラインを押した。
「はい、はい。
高井でございます。」
「高井さん、何かあったの?」
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「いやぁー、ニュースがあったわけではないようですねぇ。
シドニーが入って来て、買ってるみたいなんですけどぉ・・・・・。」
「あぁ・・・・・、そうですかぁ・・・・・。」
どうも高井さんの話は頼りない。
不安だったので、スーザンにも聞いてみた。
「スーザン? ホワッツ・ハプン?」
(Susan? What’s happen?)
「シドニーズ・バイイング・ダラー・イェン!」
(Sydney’s buying Dollar/Yen!)
「サンキュー!」
(Thank you!)
ラッサー・マーシャルも同じだ。
ニューヨーク市場が3円も高値引けをしそうなので、シドニーのディーラーがドル買いで参入してきたようだ。
もう5時になった。
大竹さんの自宅の短縮ダイアルを押した。
また、たった一回の呼び出し音だった。
「もしも。 大竹です。」
「あぁ。 梅田です。 おはようございます。」
「おはよう。 どうなった?」
「担いだよぉ!
今、183.50がテイクン!
ニューヨーク高値引けだよ!」
「そっか!」
「全部で1956本買った!
アベレージが181.78アラウンド!」
「わーかった!
俺、すぐ会社に行くから!
梅田が東京のディーラーに早く行くように、連絡とってくれ!
じゃあな!」
もう、まったくゲンキンなんだから・・・・・。
たぶん、大竹さんはほとんど眠れなかっただろう・・・・・。
俺は、朝早いとは思いながらも、電話で東京のディーラーを起こした。
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エイドリアンに頼んで東京にコンファーム(取引の確認)のテレックスを打ってもらった。
東京のディーラー達も、この金額を見たら驚くだろう・・・・・。
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