まだ、大竹さんのポジションはフェイバー(Favor)だけれども、さっきディーリング・ルームを出たときと比べると、1円50銭も落ちている。
大竹さんの持ち値は、181.78だ。
このレートは俺が決めたんだから、絶対に間違いない。
大竹さんのポジションは約20億ドルのドル・ロングだ。
俺は自分の机の上のポジション・シートをめくった。
正確なアマウントを確認したかったのだ。
ドル1956本と書いてある。
俺は思わず計算機でラフな数字を出した。
[(183.50−182.00)× 2,000,000,000 = 3,000,000,000 ]
20億ドルのポジションだと、183.50と182.00では、30億円も損益が違う。
[(182.00−181.78)× 1,956,000,000 = +430,320,000 ]
182.00で引き直すと、大竹さんのポジションは4億3000万円の利益に縮まっている。
俺は、振り返って時計を見た。ニューヨークが6時15分、東京が朝の7時15分だ。
さっきディーリング・ルームを出たのがニューヨークの5時過ぎだった。
まだ、1時間しか経っていない。
『大竹さん、だいじょうぶかなぁ? どうしたかなぁ?』
大竹さんが、タクシーで会社に向かったならば、東京の6時半頃には着いているだろう。
シドニー市場で、ドルを少しは売ったのだろうか・・・・・。
東京市場が始まる前のシドニー市場は、東京市場よりも参加者が少なく、マーケットの厚みがない。
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