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青春のモニュメント No.26

 「おい、梅田。
 20億ドルで6銭だから、1億2000万円のプラスだぞ。
 5000万円くらいは、お前に付け替えようか?」

 「いや、いいよ。 いらないよ。」

 「いやぁ・・・・・。 『介入』って、難しいなぁ・・・・・。」

 「・・・・・。」

 お互いに、黙ってしまった。



 「大竹さん、だいじょうぶだったの? 権限オーバーは?」

 「ああ・・・・・。 怒られた。
 『何やってんだ!』って。
 もともと、ドル・円500本は買う予定だったんだけど・・・・・。
 ちょっとやり過ぎた。
 『すぐ、売れ!』って言われて、売ったよ。
 こんだけ売るんだからついでだと思って、2300本売っといた。
 こんだけ買って上がらないんだから、これは落ちるよ。」

 「・・・・・。」


 元気な人だ。

 精神的なリカバリーが速い。


 「今日売ってるのはいいんだけどね。
 買い過ぎちゃったのは、問題にならないの?」

 「・・・・・。
 負けていれば、確実に大問題になった。
 ただ、勝っちゃたから・・・・・。
 誰も何も言えない・・・・・。」

 「・・・・・。
 そっか・・・・・。」

 「・・・・・。」

 「じゃあ、まあいいや・・・・・。」

 俺は急に肩の力が抜けて、へなへなとなる自分が分かった。

 「大竹さん、俺、もう帰るよ。」

 「ああ、本当にご苦労様。 ありがとう。」




 電話を切って、ふと気が付くと、あたりが暗くなってきている。

 時計を見ると、ニューヨークが8時40分、東京が9時40分だ。

 窓から、ニューヨーク摩天楼の合間にエンパイア・ステート・ビルが見える。
 美しいオレンジ色にライティングされている。

 『ああ、俺はニューヨークにいるんだなぁ・・・・・。』


 ロイター・モニターをみると179.00 - 10になっている。



 俺はわざとロイター・モニター
スイッチを切らなかった。
ロイター・モニター


 ディーリング・ルームを出て、ガラスの扉に鍵を掛けた。

 エンパイア・ステート・ビルのオレンジ色とロイター・モニターの緑色の文字だけが浮き上がるように輝いていた。




エンパイア・ステート・ビルディング
エンパイア・ステート・ビルディング
Photo by “Manhattan Fire Plan”



青春のモニュメント 《了》


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